- 「大幅ダウン提示」を受けた瞬間——その場での反応と頭の中
- エージェント経由での交渉の経緯——何を言って・相手がどう返したか
- 断れた理由①:在職中だったから——「今すぐ決めなくていい」の強さ
- 断れた理由②:年収の「下限」を事前に決めていたから
- 40代・未経験転職での年収ダウンはどこまで許容すべきか——私の考え方
最終面接を通過した連絡が来た日、エージェントから電話があった。 「おめでとうございます。内定が出ました。ただ……提示年収について、少しお話ししたいことがあります。」
「少しお話ししたいことがある」という言葉で、何かを予感した。
提示された年収
750
万円
当時の現職年収
1,000
万円
250万円のダウンだった。 「未経験での企画職転職なので年収は下がる可能性がある」という覚悟はしていた。 でも250万円という数字は、想定より大きかった。
INNER VOICE / 電話を切った後、頭の中にあったこと
750万円。現職より250万円ダウン。
専業主婦の妻。8歳と1歳の子ども。住宅ローン。
250万円ダウンで、生活は成り立つのか。妻は納得するのか。
でも——この会社の面接は良かった。上司になる人物への信頼感があった。企画の仕事への期待も大きかった。
「750万円という数字だけで断っていいのか」と「750万円という数字は受け入れられない」が同時に頭の中にあった。
「すぐに決めなくていい。まず交渉してみよう。」
リクルートワークス研究所の調査によると、40代の異職種転職者の約58%が転職直後に年収が下がったと回答。ダウン幅の中央値は約15〜20%。一方、300万円以上(約30%以上)のダウン提示を受けた場合、最終的に転職先として選んだ人は約23%にとどまる。
未経験転職での年収ダウンはある程度避けられないが、提示額は最初の数字が最終とは限らない。交渉を試みた人の約41%が提示額より上の条件で入社できたというデータもある。
交渉の経緯——エージェント経由でのやり取り全容
エージェントを通じて交渉した。 その経緯を、できるだけそのまま書く。
Todd「800万円を希望します。根拠を添えてエージェント経由で伝えてください。」
提示の700万円に対して100万円上の800万円を希望した。根拠として「現職1,000万円からのダウンを受け入れる意思はあるが、家族を養う上での生活水準の維持として800万円が最低ラインである」という内容をエージェントに伝えた。



「750万円まで対応可能。それ以上は難しい。」
会社側から750万円という回答が来た。「給与テーブルの上限がある」という理由だった。50万円の改善。ただし希望の800万円には届かなかった。



「800万円が難しければ、入社後の昇給のタイムラインを教えてください。」
金額での交渉が難しい場合、「いつ800万円に届くか」という時間軸での条件確認に切り替えた。未経験入社でも1年後・2年後のモデルケースを聞いた。



「評価次第だが、2〜3年で750万円台から昇給する可能性はある。ただし確約はできない。」
「評価次第」という回答だった。具体的なモデルケースも出なかった。「確約できない」という言葉が、判断の材料になった。
「750万円でのスタート・昇給の確約なし」という条件では、事前に決めていた「下限800万円」を下回るため、辞退を選択した。
交渉は2日間で完結した。エージェントが間に入ってくれたことで、直接交渉より心理的な負担が少なかった。 断った後、会社側から「再考をお願いできないか」という連絡が来た。 それでも断った。
SCENE / 再考を求める連絡が来た後
エージェントから「会社側がもう一度検討してほしいと言っています」という連絡が来た。
「金額は変わらないが、入社後の待遇で配慮する」という内容だった。
私は少し考えた後、エージェントに言った。
「ありがとうございます。でも、800万円という条件は変わりません。今の会社に戻ります。」
電話を切って、深呼吸した。
「今の会社に戻る」という言葉が、自分でも意外なほどすんなり出た。
在職中だった。戻る場所があった。それが、断れた理由だった。
断れた理由——2つの構造的な条件
内定を断れたのは、「意志が強かった」からではない。 2つの構造的な条件があったから断れた。
断れた理由①:在職中だったから
転職活動中、私はずっと在職していた。
「断ったら収入がなくなる」という状況ではなかった。
在職中であることは、交渉力を根本的に変える。「この条件で入社するか、今の会社に残るか」という2択になるため、「この条件では入社しない」という選択が現実的にできる。失業中や退職後に転職活動をしていると、この構造が変わる。「今の会社に残る」という選択肢がなく、「断ったら収入がなくなる」という焦りが生まれる。在職中の転職活動が重要な理由の一つは、この交渉力の差だ。
断れた理由②:年収の「下限」を事前に決めていたから
転職活動を始める前に、妻と話し合って「年収の下限は800万円」という基準を決めていた。
この基準は「800万円以上なら転職してもいい」という妻との約束でもあった。「下限800万円」を事前に決めていたから、750万円という提示を見た時に「これは下限を下回る、断る」という判断が素早くできた。事前に決めていなければ、「750万円でも前進する価値があるかもしれない」という迷いが生まれていた可能性がある。基準は事前に決めることで機能する。交渉の場で初めて考えると、感情に引きずられやすい。
「意志の強さ」で断ったのではない。
「在職中」という構造と「事前に決めた下限」という基準が、断れた条件だった。
断る力は、交渉の場で生まれるのではなく、交渉の前に準備される。
在職中に活動すること・年収の下限を決めること——この2つが揃っていなければ、あの場で断れなかったかもしれない。
「在職中だったから断れた」は、40代転職活動の最重要な教訓の一つだ。在職中の転職活動は「在職しながら探す手間」があるが、その手間は「交渉力」として返ってくる。退職してから活動することは、この交渉力を自ら手放すことになる。
年収ダウンはどこまで許容すべきか——私の考え方
40代・未経験転職での年収ダウンは、ある程度避けられない。 「どこまでダウンを許容するか」という問いへの、私なりの考え方を書く。
前提として「ダウンを許容する理由」と「ダウンを許容する範囲」を分けて考えることが重要だ。
ダウンを許容する理由①:「今の年収は今の職種・会社でのプレミアムだ」という認識
前職の1,000万円は「管理職としてのプレミアム」が含まれていた。
未経験で企画職に転換すれば、そのプレミアムがリセットされるのは構造的に当然だ。「1,000万円の自分が700万円に下がる」ではなく、「企画職1年目の市場価値に合わせた年収になる」という認識の方が正確だ。この認識があれば、ダウン提示を「不当な扱い」ではなく「市場の反応」として受け取れる。
ダウンを許容する理由②:「長期的な上昇を見据えた一時的なダウン」であること
転職後4年で年収1,300万円になった。
転職時に800万円で入社していたとしても、4年で300万円以上のアップが可能だった計算になる。短期の年収より長期のキャリアで考えることが、ダウンを許容する根拠になる。ただしこれは「入社後に成果を出せること」が前提だ。「成果を出せる職場かどうか」の判断が、ダウン許容の根拠になる。
ダウンの許容範囲:生活水準の維持が確保できるかどうか
私の場合、「下限800万円」の根拠は「専業主婦の妻・子ども2人・住宅ローンがある状態で生活水準を維持できるかどうか」だった。
この計算は人それぞれ異なる。重要なのは「感覚」ではなく「計算」で下限を決めることだ。実際に生活費・ローン・子どもの教育費をシートに並べて計算すると、「この年収なら生活できる」という数字が出る。その数字が下限になる。計算せずに感覚で決めると、交渉の場で揺らぎやすい。
この経験が教えてくれたこと
断った後、その会社への未練は残らなかった。 「750万円で入社していたら」という問いが来なかったのは、 「事前に決めた基準に従って判断した」からだと思う。
感情で断ったわけではなく、基準に従って断った。 その後悔のなさが、次の会社への活動を前向きに続けさせてくれた。
最終的に入社した会社の提示年収は900万円だった。 断った会社より200万円高かった。 断ったことが、より良い条件への道を開いた。
「断る力」は意志ではなく準備から来る。在職中であること、下限を事前に計算していること——この2つが揃えば、感情に引きずられずに断れる。
転職活動中に年収交渉に臨む人に、一つだけ伝えたいことがある。
「最初の提示が最終ではない。」
私は700万円提示を750万円まで引き上げた。 それでも断った。でも「交渉すること」自体は正しかった。 交渉データによれば、交渉を試みた人の約41%が初回提示より良い条件を引き出している。 黙って受け入れることは、機会を捨てることだ。
よくある質問(FAQ)
年収交渉はエージェントを通じた方がスムーズに進む場合が多い。リクルートエージェントは年収交渉のサポートも行っている。まず相談だけでも試してほしい。
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