「転職の軸を決めましょう」とよく言われる。 でも、軸の「決め方」を教えてくれる人は少ない。
私が転職活動を始めた当初、軸は「企画職がやりたい」だった。 でもそれは軸ではなかった。ただの憧れだった。
憧れと軸の違いは、根拠があるかどうかだ。 「やりたい」には感情がある。でも根拠がない。 「やれる」には根拠がある。そして根拠のある「やりたい」が、軸になる。
この記事では、私が「企画職への憧れ」を「自分だからこそできる企画職」という確信に変えた 思考プロセスを書く。「できること100個」を書き出した後、 私が実際にやったことだ。
「軸がない」とはどういう状態か
軸がない状態で転職活動を始めると、こうなる。
エージェントに「どんな仕事がしたいですか」と聞かれて、うまく答えられない。 面接で「なぜ弊社を志望しましたか」と聞かれて、的外れな答えを返してしまう。 求人票を見ても、どれが自分に合うのかわからない。 私が落ちた面接の多くは、この状態で臨んでいた。
当時の面接後に書いたメモ
「企画に関わりたい」と言ったが、なぜ自分が企画に向いているのかを説明できなかった。
面接官の「あなたの強みは何ですか」という問いに、答えが散らばってしまった。言いたいことがまとまっていなかった。
軸がないと、何を聞かれても「どれが正解か」を探しながら話すことになる。それが相手に伝わる。
軸があると、どんな質問にも同じ場所から答えられる。 「なぜ企画職か」「なぜ未経験で挑戦するのか」「なぜこの会社か」—— すべての答えが、一本の線でつながる。 軸とは、自分のすべての答えを束ねる一本の線だ。
軸を見つけた、3つの問い
私が軸を見つけたのは、自分に3つの問いを投げかけた時だった。 この順番で考えることが重要で、逆から始めるとうまくいかない。
やりたかったのにできなかったこと、違和感を感じ続けていたこと。感情ベースで構わない。「なんか違う」という感覚を言葉にする。
問い1の答えを裏返すと、自分がやりたいことが見えてくる。ここで初めて「志望職種」を考える。
多くの人は問い2から始める。 「企画職がやりたい」「マーケティングがやりたい」という志望職種から出発する。 でも問い1を飛ばすと、「なぜその仕事がやりたいのか」の根拠が薄くなる。 問い1が、軸の土台になる。
私の場合、3つの問いはこう展開した
問1:ずっとモヤモヤしていたこと
設計者として企画書を受け取るたびに、 「なぜこの機能なのか」「お客様が本当に欲しいのはこれじゃない」と感じていた。 でも企画側が決めたことに、後工程の自分は何も言えなかった。
もう一つのモヤモヤは、「データより感覚で動く企画」への違和感だった。 「世界初」という言葉が一人歩きして、お客様のニーズの検証が薄いまま企画が通る。 そういう場面を何度も見てきた。
問2:そのモヤモヤを解消できる仕事
答えは明確だった。企画職だ。 自分がお客様のニーズを起点に企画を立て、データで検証し、 実現可能な形に落とし込む——それができれば、モヤモヤは解消できる。 ただ、この時点ではまだ「憧れ」の段階だった。
問3:その仕事で何が貢献できるか
ここで、「できること100個」のリストを見直した。 企画職に必要なスキルと、自分のリストを照らし合わせた。
「やりたい」と「やれる」の重なりを探した
企画職で必要なこと
お客様のニーズを定量的に把握する力
×
自分にできること
データをもとに判断する習慣。感覚ではなく数字で優先度を決めてきた経験
企画職で必要なこと
実現可能な企画を立案する力
×
自分にできること
設計・実装・評価を一通り経験し、後工程の制約を熟知している
企画職で必要なこと
社内外のステークホルダーを動かすコミュニケーション
×
自分にできること
企画・設計・実装・評価の全工程の関係者と共通言語で話せる
この照合をした時、初めて「やりたい」が「やれる」に変わった感覚があった。 企画職への憧れに、根拠が生まれた瞬間だ。
「企画職にずっといる人は、後工程を知らない。だから夢物語になる。私は後工程を知っている。それが差別化になる。」——この確信が、軸になった。
軸を見つけた後に、必ずやること
軸を見つけたら、必ず「検証」をしてほしい。 軸は見つけただけでは使えない。 面接の場で実際に言葉にできるかどうかを確かめる必要がある。
私がやったのは、一人で声に出して話す練習だった。 通勤電車の中で、耳にイヤホンを差しながら、 「なぜ企画職なのか」を一人で話し続けた。 最初は3分でも言葉が詰まった。でも繰り返すうちに、 どんな問いが来ても同じ場所から答えられるようになった。
軸が「本物かどうか」を確かめる問い
「なぜ今の会社ではその仕事ができないのか」と聞かれた時、答えられるか。軸が本物なら、この問いにも答えられる。答えに詰まるなら、軸がまだ薄い。
私の場合、「なぜ今の会社で企画職に異動しないのか」という問いへの答えは、 「40代でのチャレンジを許容する風土がない。年1回の異動面談で申し出ても、聞いてもらえなかった」という事実だった。 この答えが明確にあったことで、面接での説得力が増した。
軸は、最初から完璧でなくていい
転職活動を通じて、軸は少しずつ磨かれていく。 最初は「企画職がやりたい」という漠然とした言葉だったものが、 面接を重ねるうちに「お客様目線とデータ分析と後工程の知識を持つ企画職」という 具体的な言葉になっていった。
断った面接もそのプロセスで役に立った。 「この会社では軸とズレる」と感じた瞬間が、軸の輪郭をはっきりさせてくれた。 合わない選択肢を排除することで、残るものが「本当にやりたいこと」だとわかる。
軸を持つことの本当の価値は、転職先を選ぶことだけではない。
「なぜ今の仕事を離れるのか」「何のために動くのか」という問いへの答えを持つことで、 転職活動全体のブレが消える。 軸は、転職活動の羅針盤だ。
まず3つの問いに答えてみてほしい。 答えを紙に書く必要はない。 頭の中で、正直に向き合うだけでいい。 その作業が、「やりたい」を「やれる」に変える最初の一歩になる。
軸が言語化できたら、エージェントに伝える準備が整う。 私が使ったリクルートエージェントは、軸が明確な人間には それに合った求人を探してくれた。まずは話してみてほしい。


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