- 月100時間残業→月20時間になった後、最初に変わったこと・最後に変わったこと
- 「頭の動き方が変わった」の具体的な中身——思考の質・発想の量・集中力の変化
- 体と生活の変化——睡眠・体重・平日夜の使い方・家族との会話が変わった経緯
- 「残業が減っただけなのに」では説明できない変化の正体
- 転職前の自分が「疲弊していた」ことに、転職後に初めて気づいた瞬間
転職前と転職後の数字を、まず並べる。 「残業が減った」という事実の規模感を共有しておきたい。
| 転職前(管理職時代) | 転職後(企画職1年目) | |
|---|---|---|
| 残業時間 | 100 月間残業時間(時間) 多い月は120時間を超えた | 20 月間残業時間(時間) 月によっては10時間を切る |
| 帰宅時間 | 22〜23時 子どもが寝た後に帰宅する日が 週3〜4日あった | 18〜19時 子どもが起きている時間に 帰れる日が週4〜5日になった |
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究によると、週55時間以上働く人は週40時間以下の人と比べて、認知機能テストのスコアが有意に低いことが示されている。特に「ワーキングメモリ」「情報処理速度」「語彙力」への影響が大きい。
また厚生労働省の研究では、月80時間以上の時間外労働が続くと脳と体の回復に「慢性的な疲労の蓄積」が起きることが確認されている。回復には、負荷を減らしてから数ヶ月単位の時間が必要とされている。
最初に変わったこと——転職後2週間で気づいた変化
転職後、最初に変わったのは「夜の使い方」だった。
転職前は、夜に家に帰ってからできることが何もなかった。 疲れ果てた状態で帰宅して、食事して、風呂に入って、寝る。 それだけで夜が終わっていた。
転職後の最初の週、18時半に帰宅した。 子どもたちがまだ起きていた。妻と夕食を食べた。 食後に時計を見たら、まだ20時だった。
SCENE / 転職後1週目・20時のリビング
子どもたちを寝かしつけた後、リビングに戻った。時計は21時だった。
「何をしよう」と思った。
転職前の22〜23時帰宅の生活では、「何をしよう」と思う余裕がなかった。帰宅=すでに疲弊しているので寝るだけ、という状態だった。
「何をしよう」という問いが来たこと自体が、久しぶりだった気がした。
その夜は、本を読んだ。どのくらいぶりかわからなかった。
転職後2週間で気づいた変化を、箇条書きで正直に書く。
21時に自由な時間があるということが、最初は違和感だった。「何か仕事が残っているのでは」という感覚が数日続いた。それが薄れてから、本を読んだり家族と話したりする時間が自然に増えた。
転職前は、目が覚めた瞬間から「今日もある」という重さがあった。転職後の最初の2週間で、その重さが消えた。朝起きた時に「今日は何をしよう」と思うようになった。小さな変化だが、毎朝続くと大きい。
転職前の通勤電車では、メールの確認・翌日の準備・業務連絡への対応をしていた。転職後、それらが通勤中に必要なくなった。最初の数日は何をするかわからなかったが、そのうち本を読んだり考え事をしたりするようになった。
「頭の動き方が変わった」の正体——思考の質の変化
転職後2〜3ヶ月頃から、「頭の動き方が変わった」という感覚が来た。 これは「仕事が楽しくなった」という話ではなく、もっと物理的な変化だ。
転職前の自分の思考を、今から振り返ると「常に余力がゼロの状態で動いていた」と表現できる。
月100時間の残業が続くと、脳が「目の前のことを処理する」モードで固定される。新しいことを考える余裕がなくなる。「なんとかこなす」ことが思考の中心になる。
転職後、残業が減った。脳に余力が生まれた。その余力が、思考の質を変えた。
「なんとかこなす思考」から「どうすれば良くなるか思考」に変わった。
この変化は自分でコントロールしたわけではない。余力が生まれた時に、自然に起きた。
転職前の思考の状態
「なんとかこなす」モード
目の前のタスクを処理することが思考の中心。「どうすれば良くなるか」を考える余裕がない。会議でアイデアを出すより、「早く終わらせたい」という気持ちが先に来る。
転職後の思考の状態
「どうすれば良くなるか」モード
企画を立てながら「もっとこうすれば」という発想が自然に来る。会議でアイデアを出すことが苦ではなくなった。「考えることが楽しい」という感覚が久しぶりに戻った。
企画職に転職したことで「思考の仕事が増えた」という側面もあるが、 それより大きかったのは「余力があるから思考できる」という状態の変化だった。
INNER VOICE / 転職後3ヶ月頃、企画会議の帰り道
今日の会議で、3つアイデアを出した。
全部自然に出てきた。無理して絞り出した感覚がなかった。
前の会社では、アイデアを出すことが「労力のいる作業」だった。今日は「自然に出てきた」という感覚だった。
この違いは何なのか、その時はまだよくわからなかった。
後から気づいた——「余力のある頭と、余力のない頭では、思考の質が根本的に違う」ということを。
「頭の動き方が変わった」は比喩ではなかった。残業が減ることで脳に余力が生まれ、その余力が思考の質を物理的に変えた。転職前に感じていた「アイデアが出ない」「考えが浅い」は、能力の問題ではなく余力の問題だった可能性が高い。
体と生活の変化——1年かけて変わったこと
思考の変化は2〜3ヶ月で来た。 体と生活の変化は、もう少し時間がかかった。 転職後1年間の変化をタイムラインで書く。
18〜19時帰宅が定着。21時に自由な時間がある状態に戸惑いながらも、本を読む・家族と話す時間が増えた。
残業は減ったが、未経験の仕事への適応で精神的な疲弊が続いた。「管理職なのに何もできない」という感覚が最も強い時期。この時期は残業が減った恩恵より、適応コストの方が大きかった。
「どうすれば良くなるか」モードの思考が来るようになった。体重が前職時代より2〜3kg落ちた。食事の量が変わったわけではなく、「慢性的な疲弊による食べ過ぎ」が減ったためと考えている。
「明日の仕事のことを考えながら眠れない夜」がなくなった。これが最も大きな変化だった。転職前は眠れない夜が月に数回あった。転職後6ヶ月で、それが来なくなった。
転職前の疲弊状態が「ベースライン」だと思っていたものが、実は異常値だったとわかった。1年かけて、「本来の自分の状態」に近づいた感覚があった。
転職前(月100時間残業時代)
家族との平日の会話
帰宅が22〜23時のため、子どもと話せる日が週1〜2日。妻との会話も「今日何かあった?」の確認で終わることが多かった。
転職後(月20時間残業)
家族との平日の会話
子どもが起きている時間に帰れる日が週4〜5日。夕食を家族と食べる日が増えた。妻との会話が「報告」から「対話」に変わった。
「自分は疲弊していた」と気づいた瞬間
転職前、自分が疲弊しているという認識はあった。 でも「この程度の疲弊は普通だ」「管理職なら仕方ない」という文脈で処理していた。
転職後1年が経った頃、初めて「転職前の自分がどれだけ疲弊していたか」を客観的に理解した。 その瞬間があった。
SCENE / 転職後1年・週末の公園
子どもと公園に来ていた。子どもがブランコを漕ぎながら何か話しかけてきた。
私はその話を聞きながら、同時に別のことを考えていなかった。
「今、子どもの話だけを聞いている」という状態だった。
その感覚が、ひどく久しぶりに感じた。
転職前の週末も公園に来ることはあった。でも頭の中では常に「月曜の仕事のこと」「来週の会議のこと」「あの件の対応のこと」が動いていた。
子どもと「一緒にいた」が、「ちゃんとそこにいた」ではなかった。
公園のブランコの前で、私はそのことに初めて気づいた。
「疲弊していた」とわかるのは、疲弊が終わってからだ。渦中にいる時は「これが普通だ」と思っている。転職後1年で初めて、転職前の自分の状態が見えた。
「月100時間残業から解放された」という変化は、「仕事が楽になった」という話ではなかった。 脳に余力が生まれ、体が回復し、家族の話を「ちゃんとそこで聞ける」状態が戻った—— それが、残業が減った後に起きた本当の変化だった。
転職前に「転職したら何が変わるか」を想像していた時、「仕事内容が変わる」「職種が変わる」という変化を想像していた。 「頭の動き方が変わる」「子どもの話をちゃんと聞ける」という変化は、想像していなかった。 でも今振り返ると、その変化が最も大きかった。
よくある質問(FAQ)
「残業が少ない職場への転職」は、働き方改革以降の現在では選択肢が増えている。在職中の転職活動への対応も含め、まずエージェントに相談することから始めてほしい。
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