子どもに、「大丈夫?」と言われた夜のこと。

その夜のことは、今でも鮮明に覚えている。

転職活動が佳境に差し掛かった頃だった。 面接が続き、エージェントとのやり取りが続き、 現職の仕事もこなしながら、睡眠を削って準備を続けていた時期だ。 帰宅しても頭は仕事と転職活動の間を行ったり来たりしていて、 家族と同じ空間にいながら、どこかよそよそしい自分がいた。

夕食が終わり、子どもたちが風呂から上がってきた。 当時小学3年生だった上の子が、リビングのソファに座っていた私の隣に来て、 ぽつりと言った。

「大丈夫?」

それだけだった。 それ以上でも、それ以下でもなかった。

私は「大丈夫だよ」と答えた。笑顔を作って、頭を撫でた。 子どもは「そっか」と言って、自分の部屋に戻っていった。

その後、しばらく動けなかった。

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最初に来たのは、罪悪感だった

「大丈夫?」という言葉の重さは、じわじわと来た。

小学3年生の子どもが、親の異変を感じ取っていた。 それだけのことだ。でも私には、その事実がとても重かった。

転職活動を始める前、私は「家族のためにも、より良い仕事に就くべきだ」と思っていた。 でもその夜、初めて気づいた。 私は「家族のため」と言いながら、家族を不安にさせていた。

その夜、頭の中を回り続けた言葉

この子は、毎日こんな気持ちで過ごしていたのか。
親が沈んでいれば、子どもは敏感に感じ取る。そんな当たり前のことに、なぜ今まで気づかなかったのか。
転職活動を続けることは、本当に正しいのか。

罪悪感は、じわじわと大きくなった。 「やめた方がいいのかもしれない」という考えが、初めて本気で頭をよぎった。

やめるべきか、続けるべきか。その夜、ひとりで考えた

子どもが寝た後、私はダイニングテーブルに一人で座った。 妻はもう寝ていた。家の中は静かだった。

まず、「やめる」という選択肢を、正面から考えてみた。

転職活動をやめれば、家の空気は戻る。 子どもも、妻も、今より安心して過ごせるだろう。 私自身も、「やるべきことをやった」という免罪符を手にできる。 現職に戻り、これまで通り仕事をこなせばいい。

——でも、その先は?

「やめた場合」を考えた

今の仕事に戻る。月100時間の残業に戻る。面白くない仕事をこなし続ける。
モチベーションはもう戻らない。ミスは増えるだろう。じわじわとやる気を失い続ける。
5年後、10年後、私はどんな顔をしているのか。そしてその顔を、子どもたちは見続けることになる。

「やめる」が正解ではないことは、わかっていた。 でも「続ける」を選ぶことへの後ろめたさも、消えなかった。 その二つの間で、私はずっと行ったり来たりしていた。

「子どものために」とは、何なのか

深夜になって、私はようやく問いを立て直すことができた。

「転職活動を続けるべきか、やめるべきか」ではなく、 「子どものために、自分はどう生きるべきか」 という問いに変えてみた。

子どもが「大丈夫?」と言ったのは、今が不安だからだ。 でも、子どもが大人になった時に見てほしい姿は何か—— そこまで考えた時、少し景色が変わった。

考え続けた末に、出てきた問い

今の不安を取り除くために転職をやめることと、10年後に「あの時動いて良かった」と思えることと、どちらが本当に子どものためになるのか。

やる気を失った親の背中を見せ続けることと、挑戦している親の背中を見せることと、どちらが子どもにとって良いのか。

そもそも、私は今、何のために転職しようとしているのか。

答えは、すぐには出なかった。 でも考え続けることで、少しずつ輪郭が見えてきた。

私が転職したいのは、自分のやりたいことをやりたいからだ。 その気持ちに、正直でいたかった。 「家族のため」という言葉を盾にするのは、やめようと思った。 自分のために動いている。だからこそ、家族への誠実さを忘れてはいけない。 その順番を、ようやく整理できた気がした。

でも、転職したいという気持ちは、揺らがなかった

長い時間をかけて考えた末に、私が気づいたことがある。

どれだけ考えても、「企画職に行きたい」という気持ちは消えなかった、ということだ。

消えてほしかった。 そうすれば、もっと楽になれた。 家族を優先して、今の仕事を続けることへの言い訳が立てられた。

でも消えなかった。 むしろ、子どもの「大丈夫?」という言葉を聞いた後の方が、 その気持ちの輪郭がはっきりした気がした。

私はその夜、初めて「自分の思いの強さ」を実感した。

3年間迷い続けても消えなかった気持ちが、子どもの一言でも消えなかった。 それは弱さではなく、この転職が「本物だ」という証拠なのだと、思うことにした。

やめるべき理由が揃っていても、やめたいと思えなかった。 それが答えだった。

翌朝から、変えたことが一つある

転職活動は続けることにした。 でも、あの夜を境に、一つだけ変えたことがある。

家族と過ごす時間を、意識的に守るようにした。

それまでの私は、「転職活動のために」家族の時間を削ることに、 どこか正当性を感じていた部分があった。 でもそれは間違いだった。 転職活動と家族の時間は、トレードオフではない。 家族との時間を守りながら転職活動をする。それが、誠実さの最低限だと思った。

具体的には、夕食の時間と、子どもを寝かしつけるまでの時間は、 スマートフォンを見ないことにした。 転職活動の作業は、子どもが寝た後か、通勤電車の中だけにした。 睡眠時間はさらに削れたが、家の空気は少し変わった。

子どもがまた「大丈夫?」と言ってくることは、なかった。

転職活動は、家族を不安にさせる。それでも動く理由を、持っていてほしい

転職活動が家族に与える影響を、ゼロにすることはできない。 特に子どもは、親の変化に敏感だ。 どれだけ隠そうとしても、感じ取る。

だから、家族への相談は早い方がいい。 隠しながら進めることが、一番家族を不安にさせる。 私はそれを、子どもの「大丈夫?」で知った。

そして、転職活動を続けるなら、 「なぜ動くのか」という理由を、自分の中に持っていてほしい。 家族を不安にさせてでも動く理由が、自分の中にあるかどうか。 それが揺らいだ時、転職活動は続けられなくなる。

私の場合、その答えはあの深夜に出た。 「企画職に行きたい」という気持ちは、どんな状況でも消えなかった。 それが、続ける理由だった。

あなたの「続ける理由」は、何ですか。

転職を考え始めたら

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