初めての企画が、世の中に出た日のこと。

初めての企画が、世の中に出た日のこと。

転職してから、約1年が経っていた。

その日、私が担当した企画が製品として発売された。 入社以来、初めて自分が立案した企画が、実際の製品として世の中に出た日だ。

大きなニュースになるような製品ではない。 でもその日のことは、今でも鮮明に覚えている。

発売日の朝

いつもと同じように出社した。特別な式典があるわけでもない。チームのメンバーが「おめでとうございます」と声をかけてくれた。それだけだった。

でも昼休みに一人でスマートフォンを開いて、発売された製品のページを見た時、何かがこみあげてきた。うまく言葉にできないが、「安心感」と「嬉しさ」が同時に来た感じだった。

これが、自分が作ったものだ。と、思った。

目次

企画の内容と、なぜその企画を立てたか

最初の企画は、車載エンターテインメントの機能改善だった。

テーマは「ドライブ中の家族の時間をどう変えるか」だ。 それまでの車載エンターテインメントは、 どちらかといえば「移動中の暇つぶし」として設計されていることが多かった。 後部座席の同乗者が映像を楽しむ。運転者は運転に集中する。 二つは切り離されていた。

私が立てたのは、その分断を埋める企画だった。 同乗者は映像で楽しむ。運転者は音声だけで参加できる。 同じコンテンツを、それぞれの立場で楽しめる仕組みだ。

この企画の起点は、転職活動中に家族に心配をかけた経験だった。 子どもに「大丈夫?」と言われた夜を経て、 「働く父親が家族との時間を豊かにできる企画をしたい」という思いが生まれていた。 その思いが、最初の企画のテーマになった。

企画が通るまでの1年間は、順風満帆ではなかった

「企画職は、企画を立てれば仕事が終わり」だと思っていた。 実際はまったく違った。

企画を社内で承認してもらうまでに、何度も差し戻しがあった。 市場データが足りない。競合との差別化が弱い。 コストと価値のバランスが合っていない—— それぞれの指摘に対して、データを集め直し、論理を組み直した。

差し戻しが続いた頃に書いたメモ

企画を立てることより、企画を通すことの方がずっと難しい。

前職の設計者時代、企画が「夢物語だ」と感じていた。でも企画側から見ると、通すための論理を積み上げる作業がこれだけある。

夢物語になる理由が、少しわかった気がする。

それでも、エンジニアとして後工程を知っている強みはここで活きた。 「この機能は技術的に実現可能か」「後工程でどのくらいの工数がかかるか」を 自分で試算できたことで、企画の精度が上がった。 差し戻しの回数は多かったが、同僚から「根拠が具体的だ」と言われることが増えた。

前職では絶対に味わえなかった感覚だった

発売日の夜、帰宅してから家族に話した。 「今日、自分が作った製品が売り出された」と。

妻は「よかったね」と言った。 子どもは「どんなの?」と聞いてきた。 スマートフォンで製品のページを見せると、「ふーん」と言った。 それだけだった。

でも私にとっては、その「ふーん」が嬉しかった。 前職では、自分が作ったものを家族に見せることができなかった。 仕様書を作る仕事は、製品として形になるまでに何十人もの手が入る。 「これは自分が作った」と言える感覚が、ほとんどなかった。

前職(設計者・管理職)

仕様書を作る。でも製品になるまでに何十人もの手が入る。

「これは自分が作った」という感覚が持てない。

一日の終わりに「今日、自分は何を作ったか」と問うと、答えが出ない。

転職後(企画職)

企画を立てる。承認を取る。製品になって世の中に出る。

「これは自分が起点だった」という感覚が持てる。

子どもに「これ、パパが作ったやつだよ」と言える。

この違いは、転職前には想像していなかった。 「企画職がやりたい」という気持ちはあったが、 「作ったものを家族に見せられる」という感覚まで想像していなかった。 転職して良かったことの中で、これが一番想定外の喜びだった。

ただし、企画職は「結果が全て」だった

企画が世の中に出た喜びの裏に、もう一つの現実があった。

企画職は、結果で評価される。 プロセスや努力は、あまり関係ない。 企画が通らなければ、どれだけ時間をかけても評価されない。 企画が通っても、売れなければ次の企画の承認が難しくなる。

前職では「プロセスや調整も評価される」環境だった。企画職に来て、はじめて「結果だけが問われるプロの世界」に入った感覚があった。

これは想定外だったわけではない。 でも実際に身を置いてみると、その重さが違った。 転職直後の1年間は、この重さに慣れることに多くのエネルギーを使った。

それでも、結果が問われる環境の方が、私には合っていた。 「何をやっても評価されない管理職」より、「結果が出れば評価される企画職」の方が、 ずっとやりがいがあった。

転職前の自分に、一つだけ伝えるとしたら

転職を迷っていた3年間、私は「転職後にうまくいくかどうか」を不安に思っていた。 年収が下がるかもしれない。新しい環境に馴染めないかもしれない。 企画職として通用しないかもしれない。

でも転職後1年で、初めての企画が世の中に出た。 その日の夜、子どもに「これ、パパが作ったやつだよ」と言えた。

転職前の自分に一つだけ伝えるとしたら、こう言う。

「3年間迷ったことは無駄ではない。でも3年早く動いていれば、 もう3年分の『作ったものを見せられる日』があった。」

動かないことにもコストがかかる。 時間だけは、確実に取り戻せない。

転職を迷っているあなたに、この記事が少しでも参考になれば嬉しい。 うまくいくかどうかは、やってみなければわからない。 でも、やらなければ確実にわからないままだ。

転職を考え始めたら

私が転職活動で使ったリクルートエージェントは、 40代・未経験職種への転職にも丁寧に対応してくれた。 まず話を聞いてもらうだけでも、自分の現在地が見えてくる。

リクルートエージェントに相談する(無料)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次