年収が下がる覚悟——家族を養いながら転職する時の、お金の考え方。

年収が下がる覚悟——家族を養いながら転職する時の、お金の考え方。

転職を考えた時、最初にぶつかった壁はお金だった。

専業主婦の妻、8歳と1歳の子供2人。 住宅ローンはないが、毎月の固定費はある。 転職すれば年収が下がるかもしれない。 下がった場合、生活は成り立つのか。

この不安は、感覚のまま持っていても解消されない。 数字に落とすしかない。 この記事では、私が実際にやった計算と、 その結果どう判断したかを書く。

具体的な数字は人によって違う。 でも「何を計算するか」という考え方は、参考になるはずだ。

目次

最初にやったこと——現状の数字を全部出す

転職活動を始める前に、妻と一緒に家計の全体像を把握した。 今まで「なんとなく」で済ませていた数字を、 全部紙に書き出した。

出したのは、主にこの4つだ。

STEP
毎月の固定費の合計

家賃・光熱費・通信費・保険・教育費・食費など。変動しにくいものを全部足す。「だいたいこのくらい」ではなく、直近3ヶ月の平均を出す。

STEP
現在の手取り月収

額面ではなく手取りで考える。管理職の場合、残業代がないため計算が単純だが、賞与の月割り額も忘れずに加える。

STEP
現在の貯金総額

普通預金・定期預金・投資信託など、すぐに引き出せるものと、そうでないものを分けて把握する。

STEP
年収が何割下がったら赤字になるか

固定費÷手取り月収で、最低限必要な収入の割合が出る。これが「転職後の年収の下限」を決める。

この作業を妻と一緒にやったことが、重要だった。 私だけが把握していても意味がない。 妻が転職に反対していた一番の理由は、 数字が見えていない不安だったからだ。 数字を一緒に見ることで、不安の輪郭がはっきりした。

3つのシナリオで、シミュレーションした

現状の数字が出たら、次は「年収が下がった場合」のシミュレーションだ。 私は3つのシナリオを作った。

年収変化シナリオ別・生活への影響(概算イメージ)

シナリオ生活への影響
現状維持
年収変化なし
問題なし。余裕あり。
2割減
転職直後の想定
固定費は賄える。外食・旅行を減らせば貯金も維持できる。
3割減
最悪ケース
毎月少し赤字。貯金を取り崩す生活になる。1〜2年が限界。

このシミュレーションで見えてきたのは、 「2割減なら生活は続けられる」という事実だった。 3割減は厳しいが、在職中に転職活動をして内定を取れば、 収入が途切れる期間はゼロだ。 つまり「3割減の状態が長期間続く」という最悪ケースは、 在職中活動を前提にすれば、かなり限定できる。

シミュレーションを終えた夜に思ったこと

数字にする前は「年収が下がったら終わり」という感覚があった。

数字にしてみると、2割減なら生活は続けられる。3割減でも、1〜2年は持つ。

「終わり」ではなかった。「厳しくなる」だった。その違いは大きい。

「ここ以下は受けない」という下限を決めた

シミュレーションが終わったら、次に「年収の下限」を決めた。 これが、転職活動での条件交渉の土台になる。

私が決めた下限の考え方は、こうだ。

毎月の固定費を12ヶ月分賄える手取り年収が、絶対的な下限。
それを下回る求人は、条件が良くても受けない。生活が成り立たない転職には、意味がない。

この下限を決めておくと、エージェントとの交渉が明確になる。 「この年収以上でお願いします」という言葉に、根拠が生まれる。 根拠のある条件交渉は、エージェントも動きやすい。

年収の折り合いがつかなかった会社を断ったのも、 この下限があったからだ。 「惜しいけど下限を下回る」という判断が、感情ではなく数字でできた。

「年収」ではなく「時給」で考えると、見え方が変わった

転職前の年収は、世間的には高い方だったかもしれない。 でも時給に換算すると、違う景色が見えた。

月100時間近い残業を毎月こなしていた。 その労働時間で年収を割ると、時給は思ったより低かった。 さらに土日の呼び出しや、深夜対応を加えると、 「高収入」という感覚が薄れていった。

年収が下がっても、働く時間も減れば、時給は上がる可能性がある。「年収」という単一の数字だけで判断することの危うさを、この計算で初めて実感した。

実際に転職後、残業は大幅に減った。 年収は少し上がったが、仮に同水準でも、 時給で換算すれば転職前より良くなっていたと思う。 収入の「質」を評価することも、お金の判断では重要だ。

お金の不安は、数字にすると小さくなる

転職前、お金の不安は「漠然と大きいもの」だった。 数字にすると、「具体的に小さいもの」になった。

不安は、輪郭がないから大きく見える。 数字で輪郭を作ると、「これは乗り越えられる問題だ」とわかる。 あるいは「これは本当に厳しいから、条件を変えなければ」という判断もできる。

家族を養いながら転職することへの不安は、正当だ。 無視していい問題ではない。

でも「不安だから動けない」と「数字を見た上で判断する」は、まったく違う。 前者は感情で止まっている。後者は情報をもとに動いている。

動かないことにもコストがかかる。 お金の不安を数字に変えることが、 「動けない」から「動く」への最初の一歩になる。

妻への相談も、1ヶ月の対話も、 この数字の整理があったから進められた。 感情だけの話し合いは、感情だけで終わる。 数字があると、対話が具体的になる。

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