- なぜこの問いが「難しい」のか——面接官が本当に聞きたいことの正体
- 答えを崩した2つのNG回答パターンと、その具体的な言葉
- 実際に使った答えの4ステップ構造——内定につながった回答の設計
- 答えた時の面接官の反応の変化——NGの時とOKの時で何が違ったか
- この問いの「派生バリエーション」と、それぞれへの対応法
未経験職種への転職活動で、最も頻繁に来た質問がこれだった。
「なぜ今の職種を続けないのですか?」
表現は会社によって違う。「なぜエンジニアを辞めるのですか」「現職のまま転職する方が自然では?」「設計職で積み上げたキャリアを手放すのはなぜですか」——言い方は様々だが、聞いていることは同じだ。
「なぜ今の職種から逃げるのか」という問いだ。
この問いが難しい理由は、2つある。
一つは、「現職への批判」に聞こえてしまうリスクがあること。「今の職種が嫌だから」という答えは、転職理由としてネガティブに見られる。「不満から逃げる人」という印象を与えてしまう。
もう一つは、「なぜあなたが企画職なのか」という根拠を同時に示す必要があること。「設計が嫌だから企画へ」では根拠にならない。「設計の経験があるからこそ企画職で差別化できる」という論理が必要だ。
つまりこの問いには2つのことを同時に答えなければならない。「現職から離れる理由(後ろ向きに見えない)」と「希望職種を選ぶ根拠(前向きな理由)」だ。
マイナビ転職の調査によると、未経験職種への転職面接で最も多く聞かれる質問の第1位は「なぜ現職種から転換するのか」(回答者の約82%が経験)。面接官がこの質問をする理由として最も多いのは「本気度の確認」(67%)と「論理的に説明できるかの確認」(54%)だ。
「やりたいから」という感情だけでなく、「なぜ自分が・今・この職種を選ぶのか」を論理的に説明できるかどうかを面接官は見ている。感情の強さより、根拠の明確さの方が評価される。
崩れた2つのNG回答——実際に言っていた言葉
最初の数社で落ちた時、私はこの問いへの答えを2つのパターンで失敗していた。 どちらも「言っていた事実は正しい」が、「面接官に届かなかった」。
「設計の仕事をしていると、企画から降りてくる仕様に疑問を感じることがよくありました。もっとお客様のためになる企画があるのではないかと思うようになり、自分で企画をやってみたいと思うようになりました。」
この答えには「企画に興味を持った経緯」はある。でも「なぜ設計を続けないのか」への答えがない。 「企画に興味を持った」と「設計を辞める」は別の話だ。 面接官の頭の中には「設計を続けながら企画に携わる方法もあるのでは?」という問いが残る。
INNER VOICE / 落ちた後に気づいたこと
「企画に興味があった」は、質問の半分にしか答えていなかった。
面接官が聞いたのは「なぜ今の職種を続けないのか」だ。「なぜ企画をやりたいのか」ではない。
問いの前半(今の職種を辞める理由)に答えず、後半(企画をやりたい理由)だけを答えていた。だから面接官に「この人は何かから逃げているのでは」という印象を与えてしまったのかもしれない。
「設計の仕事は、企画から降りてくる指示をただ実装に落とすだけで、自分のアイデアが活かせないと感じていました。管理職になってからは面白くない仕事ばかり回ってくるようになり、このままでは成長できないと感じました。」
これは「現職を辞める理由」には答えている。しかし現職批判に聞こえる。 「不満から逃げる転職」という印象を与えてしまった。 面接官から「企画職でも同じことが起きたらどうしますか?」と返され、うまく答えられなかった面接がある。
「現職を辞める理由」だけでも「企画をやりたい理由」だけでも足りない。この2つを論理的につなぐ「橋」が、この問いへの答えに必要なものだとわかった。
内定につながった答えの4ステップ構造
試行錯誤の末に、この問いへの答えに4つのステップが必要だとわかった。 この構造を意識してから、面接での「なぜ続けないのか」に対する面接官の反応が変わった。
答えの4ステップ構造
「設計者として〇年間、〇〇の経験をしてきました」という形で、現職の価値を否定しない。ここで現職批判を入れると、面接官の印象が悪化する。現職で積んだ経験を「資産」として語ることが起点になる。
「その経験を通じて、〇〇という問いが生まれました」という形で、転換の動機を「不満」ではなく「問いへの答えを出したい」という前向きな文脈で語る。現職への感謝と、そこから生まれた次の問いを同時に示す。
「この問いに答えるためには、企画の立場でないと限界があります」という形で、「設計を続けながら」では解決できない構造的な理由を示す。これが「逃げ」ではなく「選択」であることの根拠になる。
「だからこそ、設計経験を持つ企画者として〇〇の差別化ができます」という形で締める。「設計を捨てる」ではなく「設計経験を企画に転用する」という構造が見えると、面接官の納得感が大きく変わる。
この4ステップで答えた時、面接官の表情と質問の方向が変わった。 「逃げる転職」ではなく「選択の転職」として受け取られた瞬間がわかった。
実際に使った言葉——全文を公開する
内定した面接で実際に使った答えを、できる限りそのまま再現する。 4ステップの構造に沿って組み立てた答えだ。
「設計者として10年以上、マルチメディア製品の仕様書作成と開発調整を担当してきました。仕様書は50本以上、特許申請も10件手がけました。」
「その中で繰り返し感じていた問いがあります。『なぜこの企画が通るのか』という問いです。設計の立場から見ると、企画と現場のニーズが噛み合っていないと感じる場面が多くありました。企画者がお客様の声を直接反映できていない、あるいは後工程の技術制約を理解せずに企画を立てている——その問いに、自分で答えを出したいと思うようになりました。」
「社内異動も試みましたが実現しませんでした。また、設計の立場のままでは、企画の決定プロセスに関与できない構造的な限界があります。後工程から提案できても、企画フェーズに戻ることはできない。この問いに自分で答えを出すためには、企画職に立つしか方法がないと判断しました。」
「そして、設計経験を持つ企画者として、実現可能性を自分で判断できるという差別化があります。夢物語の企画にならない、後工程との共通言語を持った企画者として貢献できると考えています。」
全体で2〜3分程度の答えだ。 長すぎず、短すぎない。「問いに答えながら、次の会話に誘導できる」長さを意識した。
重要なのは、この答えのどこにも「現職が嫌だった」「上司が問題だった」「残業が多すぎた」という言葉が出てこないことだ。 不満は事実としてあった。でも、それを面接の場で語ることは避けた。 代わりに「問い」という形で語ることで、ネガティブな動機をポジティブな動機に転換している。
「不満から逃げる転職」を「問いへの答えを出すための転職」に変換すること——この言語化の差が、面接官の受け取り方を決定的に変えた。
面接官の反応が変わった瞬間
NGパターンの答えをしていた頃と、4ステップの答えをした後では、面接官の反応が明らかに変わった。
SCENE / NGパターン①を言った時の面接室
「企画に興味があったので転職を考えました」と答えた後、面接官がこう聞いてきた。
「でも設計の仕事を続けながら、企画に関与する方法もあったのではないですか?」
私はうまく答えられなかった。「社内では難しくて……」という言葉は弱かった。
その後、面接の流れが変わった気がした。「なぜこの人は設計を辞めようとしているのか」という疑問符が、面接官の頭の中に残ったままになった。
SCENE / 4ステップの答えをした時の面接室
「後工程を知る企画者として、実現可能性を自分で判断できる差別化があります」と答えた後、面接官が前のめりになった。
「設計経験が企画職で活きるというのは、具体的にどういう場面で活きると思いますか?」
疑問符ではなく、深掘りの質問が来た。「この人に、もう少し聞きたい」という空気に変わった。
「例えば、企画書のどこが後工程で問題になるかを事前に判断できるので、差し戻しが減ると思います。また……」
面接が、「弁明の場」から「会話の場」になった瞬間だった。
NGの答えをした時は「弁明の場」になった。正しい答えをした時は「会話の場」になった。この違いが、面接の通過率を分けた最大の要因だと思っている。
派生バリエーションへの対応
「なぜ今の職種を続けないのか」という問いには、面接官によって様々な表現のバリエーションがある。 それぞれの意図と対応法を整理する。
面接官の意図:「捨てる転職」なのか「活かす転職」なのかを確認している。
対応法:「手放すのではなく、転用します」と最初に言い切る。設計経験を「捨てる」のではなく「企画職の文脈で使う」という構造を明確にする。「設計経験があるからこそ、企画職で〇〇ができます」という形で具体例をつける。
実際に使った言葉:「設計のキャリアは手放しません。企画職の文脈で転用します。後工程を知る企画者として、実現可能性を自分で判断できる点が差別化になります。設計の10年間がなければ、この差別化はできませんでした。」
面接官の意図:「お金のためではなく本気でやりたいのか」の確認。あるいは「現実的に考えているか」の確認。
対応法:年収の話は正直に答える。一時的なダウンも想定していることを示した上で、長期的なキャリア観を語る。「短期の年収より、長期のやりがいと成長を選択しました」という論理を、感情ではなく計算として示す。
実際に使った言葉:「転職直後は年収が下がる可能性があることは認識しています。ただ、企画職として成果を出し続ければ、長期的には上がると判断しました。現在の会社で同じ仕事を続けた場合の5年後と、企画職に転換した場合の5年後を比較して、後者を選択しました。」
面接官の意図:転職を決めるまでに社内で試みたか、の確認。「すぐ辞める人では?」という懸念の裏返し。
対応法:社内異動を試みた事実を正直に言う。試みた上で転職を選んだという経緯を示すことで、「慎重な判断をする人」という印象になる。ただし社内批判にならないよう、「構造的な理由」として語る。
実際に使った言葉:「異動希望は出しました。ただ、当時の組織構造上、設計部門から企画部門への異動が実現しなかった経緯があります。その後、在職しながら転職活動を約6ヶ月続けた末に、今回の判断に至りました。」
面接前に確認すべきチェックリスト
「なぜ今の職種を続けないのか」への答えが準備できているかどうかを、面接前に確認してほしい。 以下の7つが言えれば、この問いには答えられる状態だ。

よくある質問(FAQ)
面接での答え方は、エージェントとの模擬面談で磨くのが最も効果的だ。リクルートエージェントは面接対策サポートも充実している。まずは相談だけでも試してほしい。
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