管理職になって失ったもの——やりがい・孤独・後悔を正直に書く

管理職になって失ったもの——やりがい・孤独・後悔を正直に書く
この記事でわかること
  • 管理職になって「何かが終わった」という感覚の正体——失うものの全リスト
  • 管理職のストレスが「プレイヤーのストレス」と根本的に異なる理由
  • 「プレイヤーに戻りたい」という衝動が示しているもの
  • 管理職になって後悔した時、本当に考えるべき3つの選択肢
  • 「出世して失敗した」と感じている人に向けた、前向きな再定義
  • 管理職のメリット・デメリットを経験者が正直に評価する

36歳の春、辞令が出た。

マルチメディアの画面仕様作成チームのマネージャーに、なった。 職場の先輩が「おめでとう」と言った。 上司が「期待している」と言った。 私は「ありがとうございます」と答えた。

嬉しかった。本当に、最初は嬉しかった。

でも、その感覚が続いたのは、 最初の数週間だけだった。

この記事は、管理職になって「何かが終わった気がする」という感覚を持っているすべての人に届けたいと思って書いている。その感覚は正しい。何かが終わっている。そして、終わったものを正確に言語化できた時、次に何をすべきかが初めて見えてくる。

DATA / 管理職の実態調査

マイナビの調査によると、管理職になってから「心身の健康が損なわれた」と答えた人は約7割。また産業能率大学の調査では現役の課長の約半数が「プレーヤーの立場に戻りたい」と回答(プレジデントオンライン)。

パーソル総合研究所の国際比較調査では、日本で管理職志向がある人はわずか21.4%——14の国・地域中最下位だ。「管理職になって後悔している」は、あなただけの特殊な感覚ではない。

目次

最初に気づいた喪失——「手を動かさなくなった」

管理職になる前、私は設計者だった。 仕様書を書く。問題を解決する。 画面の設計を考え、より使いやすいインターフェースを追求する。 そこには、手ごたえがあった。

管理職になってから、その手ごたえが消えた。

最初の1ヶ月で気づいた変化は、ミーティングの数だった。 プレイヤーの頃は、会議が「仕事の合間にあるもの」だった。 管理職になってから、会議が「仕事そのもの」になっていた。

プレイヤーの頃

午前中に設計を進め、午後に確認会議。夕方に修正して、帰る前に明日のタスクを整理する。

管理職になってから

朝から夕方まで会議が連続する。「作業」の時間が確保できず、作業は会議の合間か、残業時間に押し込まれる。

一日の終わりに

「今日はここまで設計が進んだ」という感覚がある。

一日の終わりに

「今日、何をしたのか」が答えられない日が増えていく。

「管理職になれば、もっと大きな仕事ができる」と思っていた。

でも実際は、「自分でやる仕事」から「人にやらせる仕事」に変わっただけだった。 それが、思っていたより、ずっとつまらなかった。

管理職になって最初の1年で、じわじわ失ったもの——全リスト

変化は急には来なかった。 毎日少しずつ、気づかないほどゆっくりと、何かが削られていった。 だから気づくのが遅れた。気づいた時には、すでに1年以上が経っていた。

Lost
「作った」という感覚

設計者の頃は、仕様書が完成した時に「これは自分が作った」という実感があった。管理職になってからは、部下が作った成果物を確認する立場になった。「確認した」は「作った」ではない。その違いが、じわじわと効いてきた。

Lost
仕事への純粋な興味

設計者の頃は、「この機能はどう実装すべきか」「このUIはもっとこうした方が使いやすい」という問いが自然に湧いてきた。管理職になってから、その問いが薄れていった。考える時間がなくなったのか、考える余裕がなくなったのか。どちらかわからないまま、興味が静かに冷めていった。

Lost
「自分の仕事」という感覚

管理職になってから、仕事は「組織のもの」になった。上から降りてきた指示を、チームに展開する。チームの成果を、上に報告する。その中で、「これは自分がやりたくてやっている」という感覚が、どこかに消えていった。

Lost
プライベートの時間と精神的な余裕

月100時間近い残業、土日の呼び出しが常態化した。家族との時間が削られ、趣味も放棄した。身体が休んでいる時間にも、頭の中では仕事が走り続けている感覚があった。「休んでいる」という感覚が、完全になくなった。

Lost
成長の実感

プレイヤーの頃は、新しいことを覚え、できることが増えていく感覚があった。管理職になってから、その感覚が消えた。技術は錆び、新しいことを学ぶ時間もなく、ただ消耗していく感覚だけが残った。

どれも急に消えたわけではない。だから気づくのが遅れた。
「何かが終わった気がする」という感覚は、これらの喪失が積み重なったサインだ。

管理職のストレスが深刻な理由——プレイヤーとの本質的な違い

「管理職はストレスが多い」とよく言われる。 でも、そのストレスの種類がプレイヤーのそれと根本的に違うことは、 あまり語られない。

プレイヤーのストレスは「できるか・できないか」の問題が多い。 難しいタスク、厳しい納期、技術的な壁——これらは、乗り越えた時に達成感がある。 ストレスとやりがいが、表裏一体だ。

管理職のストレスは違う。

ストレス
コントロールできないストレス

部下の行動、上司の方針、組織の都合——管理職を苦しめるストレスのほとんどは、自分でコントロールできないものだ。どれだけ頑張っても、解決できない問題がある。その無力感が、プレイヤー時代にはなかったストレスの本質だ。

ストレス
達成感のないストレス

プレイヤーのストレスは「やり遂げた時の達成感」とセットだ。管理職のストレスは、達成感と結びつきにくい。調整し、承認し、報告する仕事は、「終わった」という感覚が得にくい。ストレスだけがあって、解放感がない。

ストレス
板挟みのストレス

上司からは「もっと結果を出せ」と言われ、部下からは「もっと配慮してほしい」と言われる。どちらにも応えようとすると、自分が消耗する。この板挟みは、管理職特有の精神的負荷だ。どちらかを犠牲にした時の罪悪感も、また消耗する。

月100時間残業しても評価されなかった経験が示しているのも、まさにこれだ。 ストレスに見合った達成感がない。だから、消耗だけが積み重なる。

管理職の孤独——「相談できる相手」がいなくなる

管理職になって意外だったのは、孤独感だった。 チームを率いているのに、対等に話せる相手が減っていく。

部下には「上司として」接しなければならない。 上司には「部下として」接しなければならない。 同期はどんどん異動していく。 「ねえ、正直どう思う?」と言える相手が、気づいたらいなくなっていた。

ある月曜の朝、出社前の車の中で

「今日も一日、乗り越えれば終わる」と思いながら会社の駐車場に着く。エンジンを切ってから、5分ほど動けない時間がある。

これが、プレイヤーの頃は全くなかった感覚だ。「月曜が嫌」ではなく「月曜が怖い」という感覚に、いつの間にか変わっていた。

誰にも言えない、この感覚。管理職という役割が、その孤独を作っていた。

マイナビの管理職調査でも「同じレベルで仕事について話せる相手がいなくなることに孤独感を感じた」という声が複数上がっている。管理職の孤独は、多くの人が経験している。でも「管理職なんだから当然だ」と言い聞かせて、声に出せていない人が多い。

「終わった」と気づいた、ある夜の場面

管理職になってから1年半が経った頃の、ある夜のことだ。 残業を終えて、帰りの電車に乗っていた。 スマートフォンを開いて、何となく技術系のニュースを読んでいた。

あるUIデザインの記事が目に入った。 設計者の頃なら、食い入るように読んでいたはずの内容だった。 でもその夜、途中まで読んで、閉じた。

なぜ閉じたのか、自分でもわからなかった。 つまらないわけではなかった。ただ、続きを読む気にならなかった。

その夜、電車の中で思ったこと

以前は、こういう記事を読むのが楽しかった。

楽しくなくなったのはいつからだろう。

管理職になってから、自分でUIを考える機会がなくなったからか。それとも、疲れているだけか。

どちらかわからないが、何かが終わった気がした。

その夜が、私にとっての転換点だった。 「何かが終わった」という感覚を、初めて言葉にできた瞬間だった。 それは同時に、「何を取り戻したいのか」という問いが始まった瞬間でもあった。

管理職になって後悔した時の、3つの選択肢

競合サイトは「こう対処しましょう」という一般論を並べる。 でも実際に4年間管理職を経験し、転職した側から言うと、 選択肢は大きく3つしかない。それぞれを正直に評価する。

選択肢
今の会社でプレイヤーに戻る(降格・異動を申し出る)

「管理職に向いていないかもしれない」と感じているだけなら、これが最も低リスクだ。ただし収入減・周囲の目・キャリアへの影響は覚悟が必要。「管理職から降りた人」という見られ方が残ることも多い。プレイヤーに戻っても「今の会社でやりたい仕事ができるか」が別途問われる。

選択肢
管理職のまま転職する

「管理職という役割」ではなく「この会社・このチーム」が合わないと感じているなら、管理職のまま別の環境に移ることが答えになる場合がある。ただし、転職先でも「管理職の構造的なストレス」は残る。会社を変えても、失ったものは取り戻せない可能性がある。

選択肢
職種ごと変える転職

「管理職という役割」そのものが合わないと気づいたなら、職種を変える転職が最も根本的な解決になる。私が選んだのはこれだ。リスクは高いが、「本当にやりたいこと」への問いから逃げずに向き合った先に、別の答えが見えてくる可能性がある。なぜ企画職だったのかはその後の話だ。

自分に問い続けた2つの問い

もし別の会社の管理職になったとして、同じ感覚になるか。——なると思った。管理職という役割が持つ「手を動かさない」「作らない」という性質は、会社が変わっても変わらない。

もし今の会社でプレイヤーに戻れたとして、満足できるか。——できないと思った。設計者に戻っても、「企画を決める側」への関心は消えていなかった。

この2つの問いへの答えが、転職の方向性を決めた。 管理職でもなく、今の会社でプレイヤーに戻るでもなく、 「自分で企画を立てられる職種に移る」という選択肢が、 初めてリアルなものとして見えてきた。

管理職のメリット・デメリット——経験者が正直に評価する

「管理職 メリット デメリット」で検索して出てくるサイトは、 一般論を並べるだけで「経験者の本音」がない。 管理職を4年経験した人間として、正直に書く。

メリット(正直な評価付き)

  • 年収が上がる——確かに上がる。ただし時給換算すると下がることも多い
  • 意思決定に関われる——上の意向を実行するだけになりがちで、本当の意味での決定権は限られる
  • 人を育てる喜び——これは本物。向いている人には大きなやりがいになる
  • 組織を動かす経験——確かに視野は広がる。転職市場でも評価される
  • 市場価値が上がる——これも本物。40代転職では管理職経験は武器になる

デメリット(見落とされがちなもの)

  • 手を動かす喜びを失う——これが最大の喪失。元に戻れない
  • 仕事への純粋な興味が冷める——じわじわ来るので気づきにくい
  • 孤独になる——「相談できる相手」が構造的にいなくなる
  • ストレスの質が変わる——達成感のないストレスは消耗だけをもたらす
  • プライベートが侵食される——残業代なし・土日呼び出しが常態化する

管理職のメリットは「会社にとってのメリット」と重なりやすい。「自分にとってのメリット」を正直に問い直した時、答えが変わることがある。

よくある質問(FAQ)

管理職になって後悔しています。プレイヤーに戻ることはできますか?

できます。

ただし社内での降格・異動申請か、転職かという手段の違いがあります。社内での降格は収入減・周囲の目という代償があります。転職の場合はプレイヤーとして採用される企業を選ぶことが必要です。

重要なのは「プレイヤーに戻りたい」のか「今の会社が嫌なだけ」なのかを整理することです。

管理職になって何が一番つらかったですか?

「手を動かす感覚がなくなったこと」と「孤独感」の2つが最も重かったです。

月100時間残業も辛かったですが、それは「量のつらさ」でした。でも前者の2つは「質のつらさ」で、量を減らしても解決しない問題でした。この違いを理解できた時、「環境を変えても解決しない」と気づきました。

管理職に向いている人と向いていない人の違いは何ですか?

私が感じた一番の違いは「他者の成長にやりがいを感じられるか」です。

自分が作ること・動かすことにやりがいを感じる人は、管理職で消耗しやすい。チームが結果を出した時に「自分が作った」という感覚を得られる人が、管理職に向いています。これは性格の違いであり、優劣ではありません。

「出世して失敗した」と感じています。どう考えればいいですか?

管理職を経験したことで、「自分が何に向いているか」「何がやりたいか」が具体的にわかったと捉えることができます。

私の場合も、管理職の経験があったからこそ「企画職への転職」という方向性が明確になりました。失敗ではなく、自分を知るための経験として再定義することが第一歩です。

管理職に向いていないと感じたら、どう動き始めればいいですか?

まず「管理職が合わないのか」「今の会社が合わないのか」を整理することが先です。

管理職という役割自体が合わないなら職種転換が有効ですが、今の会社の環境が問題なら転職しても同じことが繰り返されます。なぜ企画職を選んだかという記事で、その整理の仕方を書いています。また転職の軸の見つけ方も参考になるはずです。

「向いていない」という感覚は、サインだ

管理職になって「何かが終わった」という感覚を持っている人に、 伝えたいことがある。

その感覚は、正しい。 何かが終わっている。そしてその喪失感を「慣れれば消える」と言い聞かせて過ごした3年間、私は消耗し続けた。 消えなかった。

「合わない」という感覚は、嘘をつかない。それは弱さではなく、自分が本当に何をやりたいかを教えてくれるサインだ。

動かないことにもコストがかかる。 その感覚が消えないなら、向き合う時期が来ているかもしれない。

管理職になった瞬間に終わったのは、「プレイヤーとしての自分」だった。

でも同時に、「本当にやりたい仕事への問い」が始まった瞬間でもあった。 あの夜、電車の中でUIの記事を閉じたことが、 転職への長い旅の、最初の一歩だったと今は思っている。

転職後4年、年収1300万円になった今も、その問いは続いている。 でも「管理職として消耗し続けた頃の問い」とは、質が全く違う。

転職を考え始めたら

「合わない」という感覚を持ち始めたら、まず自分の市場価値を知ることから始めてほしい。 リクルートエージェントへの登録は無料で、話を聞いてもらうだけでも、 自分の選択肢が見えてくる。管理職のまま転職するか、職種を変えるか——その判断材料も得られる。

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