- 社内異動希望が「聞くだけで終わる」組織のメカニズム
- 「もう少し待てば変わるかも」という期待が3年間続いた理由
- 社内でキャリアを変えようとして諦めるまでのプロセス
- 「真剣に話せなかった」という自己評価と、その原因
- 社内異動を諦めてから転職活動を本格化させた理由
毎年秋に、上司との面談があった。業務の振り返りと来期の目標設定が主な内容だ。私はこの面談のたびに「企画職に異動したい」という希望を伝えた。3年連続で。
上司の反応は、毎回ほぼ同じだった。「そうか、わかった。検討してみる」。そして何も変わらなかった。翌年の面談でも同じことを言い、上司は同じ反応を示した。
SCENE — 3回目の面談
3年目の面談の冒頭、私は「また同じことを言うことになるが」と思いながら口を開いた。「今年も、できれば企画部門への異動を希望しています」。
上司は頷いた。「うん、伝えておく」。昨年も一昨年も同じ言葉を聞いた。この3年で何が変わったか——何も変わっていなかった。
40代での転職を考えていた私にとって、この3年間は「社内でまず変えようとした期間」だった。転職よりも社内異動の方がリスクが低い。まず社内で変えられるなら、そちらを優先したかった。でも結果は変わらなかった。
「聞くだけで動かない」組織の構造
なぜ3年間、希望が実現しなかったのか。後から考えると、いくつかの構造的な理由があった。
① 40代への「チャレンジ異動」は文化的に許容されていない:私の会社では、40代での異職種異動は「ほぼ前例がなかった」。若手のキャリア形成のための異動は積極的に行われるが、管理職クラスになると「即戦力として現場を維持すること」が優先される。私の希望は文化的に「想定外」の案件だった。
② 上司には決定権がなかった:「伝えておく」という上司の言葉通り、実際には上司には異動を決める権限がなかった。人事部門や上位の経営判断が必要な話だったが、そこまで積極的に動いてくれる上司ではなかった。
③ 「どうせ辞めないだろう」と思われていた:これが最も本質的な理由だと思う。現状に不満があっても転職しない管理職は、会社にとって扱いやすい人材だ。強く主張しなければ、現状維持でいい、と判断される。
特に3つ目が刺さった。「どうせ辞めないだろう」——これは会社からのメッセージとして受け取った。転職するという選択肢を持たない人間の要望は、後回しにされやすい。
「真剣に話せなかった」という正直な自己評価
3年間の面談を振り返ったとき、私には一つの反省がある。「真剣さが伝わっていなかったかもしれない」ということだ。
私は人と話すとき、どうしても場の空気を和らげようとしてしまう。緊張した場面でも、笑いを交えて話す癖がある。これは普段のコミュニケーションでは強みになることもあるが、「本気で変えたい」という意思を伝える場面では弱点になった。
INNER VOICE — 面談後の振り返り
面談から帰って、今日も笑いながら話していたな、と気づいた。「企画職に行きたいんですけど、まぁなかなか難しいですよね」——こんな言い方をしていた気がする。
これでは伝わらない。「企画職に異動しなければ、転職を考えます」というくらいの覚悟が、言葉と態度から伝わっていなければ、相手も本気で動かない。私は3年間、本気を伝える言い方ができていなかった。
これは自己弁護ではなく、正直な反省だ。同じ状況の人に伝えたいのは、「社内で変えたいなら、本気であることを伝える言い方をしないと動かない」ということだ。笑いを交えた柔らかい言い方は、本気の要望を薄めてしまう。
「この会社では変わらない」という確信が固まった日
3年目の面談から数ヶ月後、決定的な出来事があった。若手の社員が企画部門に異動した、という話を聞いたのだ。その社員は入社4年目。まだ管理職にもなっていない。
3年間「検討します」と言われ続けた私の希望は、1度も実現しなかった。若手の異動は、あっさり決まった。
この事実が、「この会社では変わらない」という確信に変わった。年齢の問題もある。管理職という立場の問題もある。でも根本的には、「40代管理職のチャレンジ異動」は、この会社の文化として許容されていなかった。それが明確になった瞬間だった。
あの日からが、本格的な転職活動のスタートだった。「社内で変えることを諦めた日」が、「転職で変えることを決めた日」だった。
3年間かけて「この会社では変わらない」という確信を得た。無駄な時間だったとは思わない。この確信がなければ、転職後に「やっぱり戻りたい」という迷いが残っていたかもしれない。諦めるまで試みたことが、転職への覚悟になった。
社内異動を諦めてから変わったこと
「社内では変わらない」と決めてから、行動の質が変わった。それまでは「社内で変えることも、転職することも、どちらも中途半端」という状態だったが、転職に絞ることで、やるべきことが明確になった。
具体的には、転職エージェントへの登録、自己分析の開始、「できること100個」リストの作成——これらを本格的に進め始めた。社内異動希望を出し続けた3年間のモヤモヤが、転職活動への具体的なエネルギーに変わった。
1ヶ月目:転職エージェント(リクルートエージェント)に登録。「なぜ今さら動いたのか」という問いへの自分なりの答えを言語化し始めた。
2〜3ヶ月目:「できること100個」リストを作成。社内での3年間の「変えようとした経験」も、リストの材料になった。
4〜6ヶ月目:本格的に面接活動を開始。「社内で変えようとした経験」が、転職面接での「なぜ転職するのか」の説得力ある説明に変わった。
「社内で変えようとして動けなかった3年間」は無駄ではなかった。その経験が「会社を変えても軸はブレない」という確信の根拠になったからだ。
転職後、「40代で異動が通らなかった」経験の活かし方
転職面接で、「なぜ転職するのか」という質問には、必ずと言っていいほど正直に答えた。「社内での異動希望を3年間出し続けたが、実現しなかった。社内で変えることを試みた上での転職判断だ」と。
この経験談が、面接官にポジティブに受け取られたことがあった。「3年間諦めずに社内で試みたことは、粘り強さの証拠だ」と言ってもらえた会社もあった。「すぐに外に出た人材」ではなく、「できる範囲で内部から変えようとした人材」という印象は、転職先への誠実さを示すことができた。
よくある質問(FAQ)
「社内では変わらない」と確信したなら、転職という選択肢を具体化する段階だ。エージェントへの相談は、転職の決断を迫るものではなく、「自分の選択肢を知る」ための行動として活用できる。
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