- 転職後2年目に管理職オファーを断った、具体的な理由
- 断った後、社内でどう見られたか——周囲の反応と評価の変化
- 「管理職を断る」ことがキャリアに与えた影響(年収への影響含む)
- 転職前と転職後の「管理職」への向き合い方の違い
- プレイヤーとして働き続けることを選んで、後悔しているかどうか
転職して2年目の春、上司から呼ばれた。
「チームリーダーとして、小さなチームを持ってみないか」という話だった。 正式な管理職ではないが、3〜4名のメンバーを束ねる役割だ。 会社からすれば、自然な打診だったと思う。 40代、元マネージャー。管理の経験がある人間に、管理の仕事を渡す。 わかりやすい判断だ。
でも、私はその場で少し考えてから、断った。
断った理由は、感情的なものではなかった。 「もう管理職はやりたくない」という拒絶反応でもなかった。 3年かけて転職した理由、転職活動で言語化した自分の軸、 転職後1年間で見えてきた自分の状況——それらを並べた時に、 「今ここで管理職を受けることは、自分の転職の目的と合わない」という判断だった。
この記事では、その判断の内側を書く。 断った後に周囲にどう見られたか、評価や年収にどう影響したか、 そして4年経った今、後悔しているかどうかも、正直に書く。
「管理職を断るのはキャリア的にどうなのか」と迷っている人、 転職後に同じような場面に立っている人に届けば、と思う。
転職後2年目に、管理職のオファーが来た
転職後の1年目は、正直なところ成果よりも「信頼を積む期間」だった。 社内人脈はゼロからのスタートで、 誰に何を聞けばいいかもわからない状態から始まった。 小さな依頼に確実に応える。前職の話を必要以上に出さない。 まず「この人は信頼できる」という評判を積み上げることだけを考えていた。
そのうちに、初の企画提案が採用され、 動けるエリアが少しずつ広がってきた。 チームに貢献できているという実感も、ようやく出てきた時期だった。
そこに来たのが、管理職へのオファーだった。
上司との面談——転職後2年目・春
「とっどさん、マネジメント経験があるのは知ってる。うちのチームが少し大きくなってきたから、小さなグループを持ってもらえないか」
短い沈黙があった。
「少し考えさせてください」
そう答えて、その日は持ち帰った。正式な回答は翌週にした。
オファー自体は、評価してもらった証拠だ。 嬉しくなかったと言えば嘘になる。 でも「嬉しいかどうか」と「受けるべきかどうか」は、別の問いだ。
なぜ断ったのか——3つの理由
翌週の回答までの数日間、自分の中で理由を整理した。 感情ではなく、論理で断る必要があると思っていた。 「管理職は嫌だから」という感情だけでは、相手に伝わらないし、 自分自身も納得できない。
整理した理由は、3つだった。
前職を離れた大きな理由のひとつは、管理職として面白くない仕事ばかりが回ってくる構造に閉塞感を感じたことだった。
プレイヤーとして企画に関わりたい、手を動かしたい——その気持ちが、転職の根にあった。 転職後2年目で管理職に就くことは、3年かけて動いた理由を、自分で打ち消すことになる。
「また同じ場所に立つために転職したわけではない」という感覚があった。
転職後1年で初の企画が採用された。でも、まだ「自分にしかできない企画」の精度は高くなかった。
エンジニア出身の視点という強みを、企画の現場で本当に活かせるようになるには、 もう数年かかると感じていた。その蓄積を途中でやめて管理業務に切り替えることは、 自分の価値の源泉を育てきる前に手放すことになる、と判断した。
前職では10年以上、管理職としてチームを持ってきた。
月100時間の残業の多くは、メンバーの進捗管理・調整・評価面談・採用面接に消えていった。
プレイヤーとして動ける時間が、管理業務によって圧迫される構造を、身体で知っていた。 同じことが今の職場でも起きる。そのコストを払う準備が、まだ自分の中にできていなかった。
この3つを上司に伝えた。 「評価していただいているのはわかります。でも今の自分には、プレイヤーとして企画の精度を上げることが先です。管理職を受けるのは、もう少し後にしてほしいです」と。
断る言葉を探しながら、頭の中にあったこと
「また管理職に戻るために転職したわけじゃない」
「でも、断って評価が下がったらどうしよう」
「そもそも、断って大丈夫なのか」
断る不安はあった。 でも「不安だから受ける」というのは、現状維持のコストと同じ構造だと気づいていた。 「断るリスク」だけを見て、「受けるリスク」を見ていない状態だ。 両方を並べた時、断う方が自分の軸に近かった。
断った後に起きたこと——周囲の反応
正直に言う。断った直後、少し気まずかった。
上司は「わかった。また機会があれば」と言ってくれたが、 しばらくの間、自分の判断が正しかったのか、確信が持てない時期が続いた。
予想と違った周囲の反応
断ったことが周囲に伝わると、思っていたのと違う反応があった。
断る前に予想していた反応
- 「やる気がない人」と思われる
- 昇進レースから降りたと見られる
- 面倒な仕事が回ってこなくなる
- なんとなく、評価が下がる
実際に起きたこと
- 「自分の軸を持っている人」という評価に変わった
- 「プレイヤーとしての専門性への期待」が高まった
- 企画の仕事がより多く回ってくるようになった
- 半年後に別の形での評価が上がった
断ったことが、「自分の仕事への向き合い方を言語化できている人」という シグナルになったのかもしれない。 少なくとも、管理職を断ったことで評価が明確に下がった場面は、なかった。
リクルートワークス研究所の調査によると、「管理職になりたくない」と回答した正社員の割合は年々増加しており、2023年時点では約50%に達している。特に30〜40代の専門職・技術職では、「プレイヤーとして専門性を高めたい」という理由が上位に挙がる。管理職への昇進を断ることは、例外的な行動ではなくなっている。
ただし調査は「断りたい気持ち」であり、実際に断れるかは別の問題だ。断った際の影響は、会社の文化・上司の理解度・本人の伝え方によって大きく異なる。
年収への影響——断った後、むしろ上がった逆説
転職後4年で年収が1,000万から1,300万になった経緯は別記事に書いた。 ここでは、管理職を断ったことが年収にどう影響したかだけを書く。
| 転職時 | 年収:約1,000万円(前職と同水準) | 企画職プレイヤーとして入社。管理職経験者だが、給与テーブルはプレイヤーのレンジでのオファー。 |
| 1年目 | 変化なし——信頼構築と初企画採用の時期 | 年収はほぼ横ばい。社内人脈をゼロから積み上げ、初めての企画提案が採用された。成果は出始めているが、評価への反映はまだ。 |
| 2年目 | 管理職オファー→断る→プレイヤーとして継続 | 管理職オファーを断った。断った後、企画の仕事量が増え、責任の大きい案件を任されるようになった。結果として評価が上がり、年収が微増。 |
| 3年目 | 企画の精度が上がり、評価が明確になった | 自分の企画スタイルが確立されてきた時期。「エンジニア出身の視点」が強みとして社内で認知され始める。年収は前年比で約100万増。 |
| 4年目 | 年収:約1,300万円——プレイヤーとして到達 | 交渉したわけではなく、評価の結果として上がった。管理職のレンジに入ったわけでもない。プレイヤーのレンジの上限に近づいた形。 |
管理職を断ったことが、直接的に年収を下げた局面はなかった。むしろ「プレイヤーとして何ができるか」の蓄積に集中できたことが、評価の上昇につながったと感じている。ただしこれは、プレイヤーのレンジが高い会社だったという前提がある。会社によっては、管理職に就かないと年収の天井が低い場合もある。
管理職に就けば、管理職の給与テーブルで評価される。 プレイヤーに残れば、プレイヤーの給与テーブルで評価される。
どちらが高いかは、会社によって違う。 大事なのは、「管理職を断ること=年収を諦めること」ではないという事実を知っておくことだ。 プレイヤーのレンジが十分に広い会社を選ぶことが、先の判断として重要になる。 私が転職先を選ぶ際に「上場企業であること」を条件にしたのは、こういう理由もある。
転職前の管理職と、転職後のオファーの違い
転職前も、転職後も、管理職という選択肢に向き合う場面があった。 でも、その向き合い方はまったく違った。
転職前——流れで管理職になった
- 「次はリーダーを」という組織の流れに乗った。断る発想がなかった。
- 管理職になって何をしたいか、なぜなるのかを考えていなかった。
- 結果として、面白くない仕事ばかり来る構造に10年間閉じ込められた。
- 「この仕事をしている」という感覚が薄れていった。
転職後——判断して断った
- 「なぜ管理職を受けるか・断るか」を自分で問い、答えを出した。
- 断った理由を上司に伝え、代わりに何で貢献するかを示した。
- 断った結果として、プレイヤーとしての仕事が増えた。
- 「自分が選んで、この仕事をしている」という感覚を持てた。
最大の違いは、「自分で判断したかどうか」だ。
転職前は、流れに乗った。断る選択肢があることも知らなかった。 転職後は、断る選択肢を持った上で、断った。 その「選んだ感覚」が、仕事への向き合い方を変えた。
転職というのは、キャリアをリセットするのではなく、 「自分の仕事を、自分でデザインする感覚を取り戻す機会」でもあったと、今は思う。
後悔しているか——4年経った今、正直に答える
Todd正直に言う。後悔していない。
ただし、「後悔していない」と言えるのは、結果が良かったからだけではない。 仮に年収が上がらなかったとしても、断ったことの判断は変わらなかったと思う。 なぜなら、断った理由は「年収を上げたいから」ではなく、 「自分の転職の目的と合わないから」だったからだ。
転職して良かったと思うのは、年収が上がったからではなく、「自分が選んで、この仕事をしている」という感覚を持てるようになったからだ。
転職前の管理職時代、仕事に行くのが憂鬱な朝があった。 今は、そういう朝がほぼない。 単純な話だが、それが転職して変わった最大のことかもしれない。
ただし、これはすべての人に当てはまる話ではない
管理職を断ることが正解かどうかは、人と会社によって違う。 会社の文化、プレイヤーとしての給与レンジ、自分のキャリアの軸—— これらが揃った上での判断だった。
私が「断ってよかった」と思えるのは、 断る前に自分の軸を持っていたからだ。 転職の軸を言語化する作業をしていなければ、 断る根拠も言葉も持てなかった。 軸があるから、判断できた。 逆に言えば、軸がなければ断ることも受けることも、どちらも根拠を持てない。
「管理職を断るのはキャリアとしてどうなのか」という問いへの答えは、 一つではない。
でも確実に言えることは、「流れに乗って受けること」と「判断して受けること」は、同じ結果でも全く違う体験だということだ。 断ることも、受けることも、自分の軸から判断した時に初めて意味を持つ。
よくある質問(FAQ)
「プレイヤーとして活躍できる企業かどうか」は、会社の給与テーブルと評価制度を見ないとわからない。リクルートエージェントは在職中でも相談でき、プレイヤーのレンジが広い企業の情報も持っている。まず選択肢を知ることが、判断の前提になる。
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